「村上春樹スピーチ全文和訳」(しあわせのかたち)

最近、どうも別にトロピカル・イラストレーターらしからぬポストが続いていますが・・・こういう時期なのでしょう、今は。地殻変動のようなものが起こっているというか。
好きな作家の一人である村上春樹氏がエルサレム賞を受賞したときのスピーチ、ほんの端きれをTVで見かけて気にはなっていましたが、きちんと向き合う暇がないままでした。しかし今日、そのなんと全文を和訳してくださったポストに出会い、感動しましたのでご紹介します。

http://d.hatena.ne.jp/sho_ta/20090218/1234913290
こちらのブログの書き主さんはご謙遜からか、「かなり荒い訳」などとおっしゃっていますが、脚注でこのような補足を見かけました。

つーか一番アタマに来たのは、エルサレムポストの速報では「The unique divinity of the individual」だったのが、全文では「the dignity of the individual」になってたこと。全然違うぢゃねーかよーーーー。これ、アドリブで村上春樹がdivinityと言い換えてたんならひっくり返るんだけど、たぶん単なる記者の誤記なんだろうなあ……。。。

このことからも、注意を払って訳にあたっているなという印象を受けました。

このポストのおかげで、なんの苦労もなく村上春樹のスピーチの全容を知ることができたわけです。
いつものことながら、村上春樹のメタファーは巧妙で秀逸だと感じました。
Blog「しあわせのかたち」さんで以下のように約されている部分

僕は強く信じています。物語を書きつづること、人々に涙や慟哭や微笑みをもたらす物語を書くことによって、個々の魂のかけがえのなさをはっきりさせようとし続けること、それこそが小説家の仕事であると。

これは原文(HAARETZ.comより抜粋)はこのように表現されています。

I have only one reason to write novels, and that is to bring the dignity of the individual soul to the surface and shine a light upon it. The purpose of a story is to sound an alarm, to keep a light trained on The System in order to prevent it from tangling our souls in its web and demeaning them. I fully believe it is the novelist's job to keep trying to clarify the uniqueness of each individual soul by writing stories - stories of life and death, stories of love, stories that make people cry and quake with fear and shake with laughter. This is why we go on, day after day, concocting fictions with utter seriousness.

この部分がもっとも心に強く残りました。同じ事を形を変えて、村上春樹は別の場所でも言っていたように記憶していますし、また、他の作家も異口同音にそういっている方が多い印象を受けます。

また、私自身もそのように思います。こと「表現」という数値で測りにくい部分で活躍するすべてのプロフェッショナルの共通事項ではないでしょうか。自らの命の源、生命の強さ、生命の尊さ、そして絶妙な貴重さを理解し感じることで表現する力が生まれ、それを表現し続けることが表現者の共通の天命であり、文筆家でも写真家でも舞台家でもイラスト描きでも、みな一様にここへの意識と理解があるように思います。

■関連サイト
村上春樹、エルサレム賞受賞スピーチ試訳: 極東ブログ

卵と壁のアナロジーの欺瞞――村上春樹エルサレム賞講演についての雑感―― - BLUE ON BLUE(XPD SIDE)跡地

常に卵の側に(ハアレツに寄せられたコメント)

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