人間関係にうんざりしたときに読む本(杉本良明)

今回まとまって読んだ一連の本のうちのひとつです。なんともネガティブな香りの漂うタイトルですね(笑)ご紹介を躊躇ってしまいますが、わたくしにとっては大きな「効き本」でしたので、最後の一冊で紹介します。

どなたかのブログに本のブログパーツで貼られていて出合った本です。まずそのタイトルで興味を持ちました。
何よりも決め手になったのは、amazonのカスタマーレビューで上位にあがっていた方のレビュー内容でした。それを読んで即決、ポチと購入したのでした。

ネガティブな香りの漂うタイトルですが、タイトルと内容は少し違うような気がします(しかしながら私がタイトルでひっかかったのですから、このタイトルは戦略として成功していると思います・笑)。
コーチングのプロとして活動中の方が書かれたこの本で通して「きつい人」と呼ばれている、いわゆる「高圧的な」「やりにくい」人とどうしたら軋轢(あつれき)を回避してつきあうことができるか、について書かれた本です。その意味では、関係を維持していくための前向きな本、と捉えることができるでしょう。

この本は、感じ入ったところに貼るポストイットが途中でなくなってしまいましたが、それでも特に印象に残ったところをピックアップしてみます。

■人を説得する十二原則(デール・カーネギー『人を動かす』創玄社)
1)議論を避ける
2)誤りを指摘しない
3)誤りを認める
4)おだやかに話す
5)"イエス"と答えられる話題を選ぶ
6)しゃべらせる
7)思いつかせる
8)人の身になる
9)同情を持つ
10)美しい心情に呼びかける
11)演出を考える
12)対抗意識を刺激する

のっけから、この本の純粋な引用ではなく他書の引用なのですが。この12条は心に響きました。
わたくしが勤務していたときの社長が、忙しく社屋を出られた後、目に留まった「ささやかな改善すべき点」について、大きなウィンドー越しに身振り手振りで私に向かって『考えてみて』と指示し、急ぎ足で去ったことを鮮やかに思い出しました。人を信頼し、動かすことのできる優れた方だったと今でも思います。

もうひとつ注目すべきは「きつい人」が相手を批判したときは、どうしても自分を正当化する必要がある、ということです。

なるほど、と思いました。私は批判されたら全て自分に非があるのだ、と思い込みがちでしたがそうではないこともある、ということを気づかせてくれる一文でした。

人間穏やかに言えばわかる(責めたり咎めたりの「外的コントロール*1手段に訴える必要はない)

この章は、会社や社会というくくりだけではなく、親子関係においても充分適用、見直されるべきパートで、実際に本でも親子関係を挙げて説明しています。親子における体罰の是非を問う場面においても有効だと思います(わたくしは体罰はよくない、と考えています)。

相手の感情を肯定する「承認」*2は人間関係にプラスを生む

この章はいたく同感する部分でした。広く挨拶や笑顔も含む承認は、全ての人間関係において正常に為されるべきだとも思いました。それは家族などごく近い身内であっても、です。

忘れてはならないのが、自分で自分を承認できることが、他人を承認できる条件である

わたくしにとってずっと課題になっていますが、耳痛くも引き締まった心持になった部分でした。正しい自己肯定感あってこそ、正しく他を肯定する事ができる。正常な人間関係の基本でしょう。
しかしここでふと思いましたが、そうすると他を肯定しない「きつい人」もどこか自分のあり方に疑問を抱えて不安定なのかもしれないですね。

身内には遠慮がないから摩擦が起こる

これにはいたく思い当たる事例があります。身近で閉ざされた間柄であればあるほど、外からは見えない軋轢が生じやすい。親子関係というのはその頂点だと思います。

こじれた人間関係を解決するために必要な基本理念は加点主義、つまり「ゼロから出発して、期待感を捨てる」ということです。言い換えると「相手はこういう人なんだ」という健全な絶望感から出発するわけです。

「健全な絶望感」・・・この部分が目からウロコが落ちた部分でした。
それまで、相手に対して絶望する(絶望したまま関係を維持し続ける)、などというのは、相手に対して失礼なことだとばかり思っていました。でも、相手に対する過度の期待は結果的に相手に対してより失礼を招くこともある。これから大いに参考にしていこうと思った章でした。

うーん、長くなってしまいました。この本は、今回読んだ一連の中ではもっとも自分の価値観を大事にする寄り、なもので、その意味では居心地がよくて当然といった内容だとばかり思ってしまいがちでしたが、こうして振り返ってみるとさすがコーチングをする人の本、長い長い「承認」をずっと書き続けて読者をひきつけ、信頼させておいて、最後の最後でそこまでひきつけられてきたであろう読者に決定的に足りないもの(補うべきところ)を明確に認識させる良書であったと思い直しました。
決して生温かい本ではありませんでした(笑)今後に役立てていこうと思います。

人間関係にうんざりしたときに読む本

人間関係にうんざりしたときに読む本

人を動かす 新装版

人を動かす 新装版

 

*1:心理学者ウィリアム・グラッサー博士(William Glasser, 1925〜)が20世紀後半に提唱した『選択理論』中で使われている言葉

*2:相手の感情を肯定することを心理学用語で「承認」と呼びます